パス・イット・バックの3つの「なぜ?」
パス・イット・バックは、ラグビー(タグラグビー)を通じて、困難な立場にあるアジアの子どもや若者が、ジェンダー平等の考え方、リーダーシップなどのライフスキルを身につけることによって、持続的な地域開発を目指すプログラムです。なぜ、「アジア」、「ラグビー」、「ライフスキル」なのか?3つの「なぜ?」にある背景について、ご紹介します。
なぜ「アジア」?
・チャイルド・ファンドが支援するアジアの国では、子どもがスポーツなどの様々な活動に参加する機会や、教育、自己啓発の機会が限られている場合があります。このような状況にある子どもたちの多くは貧困地域に暮らしており、地域開発が必要とされています。パス・イット・バックでは、子どもたちがリーダーシップやジェンダー平等、将来の計画づくりなどの知識や日常のリスクに対処するスキルを身につけ、自分たちが暮らす地域において持続的にプログラムを実施することで、地域開発に貢献することが期待できます。
なぜ「ラグビー(タグラグビー)」?
・パス・イット・バックに参加することで、子どもたちは以下のラグビーの5つの価値を学びます。
いかなる状況でもフェアであり誠実である「品位」
一つの試合にかける「情熱」
文化的・地理的・政治的・宗教的な相違を越えた「結束」
激しさの中での「規律」
すべての人への「尊重」
これらの価値は、プレー中だけではなく日々の生活の中でも実践され、子どもたちの健全な成長を支えます。
・ラグビー(タグラグビー)はアジアでは新しいスポーツであり、ほぼすべての子どもたちが経験したことがないため、「男性のスポーツ」といった固定観念がありません。そのため、現実的にも教育の面でもジェンダー間の平等が十分に実現されていない地域においても、女の子も男の子と同じスタートラインに立って参加することができます。
・タグラグビーは、身体接触や地面に倒れるプレーはなく、タックルの代わりに腰につけられたタグを取る、誰にでも楽しめるスポーツです。必要な用具もボールとタグだけなので、グラウンドとなる場所さえ確保できればプレーすることができます。
なぜ「ライフスキル」?
・チャイルド・ファンドが活動するアジアの貧困地域では、いじめや暴力、学校の無断欠席、10代の妊娠、非行集団との関わりなどに加えて、喫煙や飲酒、麻薬などの問題が見られることもあります。これらは、学校に通い続けることや将来の就学の機会にも悪影響を与え、成長期にある子どもたちの身体、精神にも害をおよぼします。ライフスキルは、子どもたちが抱えるこのような問題を解決するために役立ちます。
・UNICEFはライフスキルを、「日々直面する悩みや困難に対応できる知識、考え方、スキル」と定義しています。パス・イット・バックは、子どもたちが日々直面する悩みや困難に対応できるよう、コミュニケーションスキル、自信、問題解決能力を含むライフスキルを身につけるプログラムです。
・パス・イット・バックの1回90分のセッションでは、リーダーシップ、ピア・プレッシャー(思春期の仲間からの圧力とその弊害)、男女の違い、貯蓄すること、将来の計画など、ライフスキルのテーマが設定されています。セッションの前半では、グラウンドでタグラグビーの練習をします。後半はライフスキルのテーマに沿って、タグやボールを使うミニゲームを行います。そのあとにゲームの中で感じたことや学んだことを、輪になって日常生活での経験と関連させて話し合い、日々の困難への対処法を学びます。
【1回のセッションの流れ】
①タグラグビーの練習
②ライフスキルのテーマに沿ったタグラグビーのゲーム
③ゲーム中に感じたことの振り返り
④家庭や学校での普段の生活につなげて考える
⑤学んだことを活かせるよう、対処法について考える
→日々の困難に対応する力が身につく!
1回のセッションの例
テーマ | ピア・プレッシャー |
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目的 | 自分が仲間からどう見られているかが気になる思春期において特に影響をうけやすいピアプレッシャーについて学びます。ゲームを通して、ピア・プレッシャーを受けることがどういうことなのか、そして、受け手がどう感じるものなのかを考え、かかる圧力による弊害を理解します。 |
流れ | ①猫役とねずみ役に分かれて、ねずみ役のタグを取ることで猫役が増えていくという、タグラグビーの練習を行います。
②攻撃する役と、追いかけられる役の2つのグループに分かれて、ミニゲームを行います。 ③輪になって座り、それぞれの役になった時の気持ちや、攻撃役とピア・プレッシャーについて振り返ります。 ④友だちからピア・プレッシャーを受けた経験を共有するなど、普段の生活での経験につなげて話し合います。「ボーイフレンドと一緒にいたら、気づくと彼から飲酒や学校の欠席など良くないことを覚えるようになっていった。途中で、良くないこと、自分のしたくないことだと思ったので彼とは別れた」、などの事例が共有されます。 ⑤今後ピア・プレッシャーに立ち向かうための対処法について考えます。「ラグビーの価値の一つ『品位』について考え、自分自身に誇りを持ち、品位を傷つけることに巻き込むようなプレッシャーを他の人に与えない」などの対処法が提示されます。 |