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シンポジウム「生成AIの子どもの権利への脅威」を開催しました!

4月9日(火)、チャイルド・ファンド・ジャパンと一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会の共催によるシンポジウム「生成AIの子どもの権利への脅威」を開催しました。今回は、国連大学での会場開催とYouTubeのオンライン配信のハイブリッド開催で、日本だけではなく世界中から参加いただくことができました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

第一部の基調講演に先立ち、冒頭、チャイルド・ファンド・ジャパン事務局長の武田より、今回のシンポジウム開催の背景や法整備の概況などに触れました。その中で武田は、「チャイルド・ファンド・ジャパンの行った世論調査で、70%の人が『AIが生成する子どもの性的画像も規制すべき』と回答した」「イギリス(イングランドとウェールズ)では生成AIによる子どもの性的コンテンツがすでに違法とされている」ことなどを示しました。

その後第一部では、オンラインにおける子どもの性的画像、生成AIの脅威に取り組むイギリスの非営利団体インターネット・ウォッチ・ファンデーションのCEOスージー・ハーグリーブス氏を招き、基調講演を行いました。ハーグリーブス氏は、インターネット・ウォッチ・ファンデーションの活動の概要を説明するとともに、生成AIによる性搾取画像の状況について詳細に説明しました。「ある1つのダークウェブで1ヶ月間に約2,500点の違法画像(イギリスの法律から違法と言えるもの)が発見された」「生成された画像は実在の子どもの画像からつくられており、AI生成画像だからといって被害者がいないわけではない」など、この問題について掘り下げました。

最後に、ハーグリーブス氏は、「生成AIの問題はグローバルな問題であり、国際基準を制定し、世界全体で取り組んでいかなければならない」と、参加する世界全体の人に呼びかけました。

シンポジウムの第二部は、「子どもの権利をどう守るか」というテーマで専門家によるパネルディスカッションを行いました。ここでは、生成AIによる子どものオンライン性搾取に立ち向かうための法制度、技術的対策などが議論されました。

パネルディスカッションは、インターネットコンテンツセーフティ協会の立石聡明氏、インターネット・ウォッチ・ファンデーションのマイク・タンクス氏、山崎法律事務所の長瀬貴志氏という、各界からのスピーカーによって行いました。

長瀬氏からは、「現行の法律においては、表現の自由との関係で、創作の児童の性的画像は規制の対象となっていない」「AIがつくるコンテンツは現行法がまったく想定していないものである」「現行法の改正について検討する時期に来ている」といったことが言及されました。

立石氏は、生成AIによる画像と実物の区別について、「見分けるのは極めて難しい。AI生成画像のもととなった子どもの画像を探し当てることができればよいが、それも難しい」「AI生成画像にウォーターマークをつけるという議論もあるが、現実的には無理であろう」といった技術的な問題を指摘しました。

さらにマイク氏からは、「ダークウェブは匿名性が高く、法執行機関やNGOによる追跡や調査が困難である」「小児性愛者マニュアル(子どもの性搾取に関する手段や方法が記載されたもの)が存在する。イギリスでは、これの所持自体違法だが、AI生成画像に関するマニュアルは、違法となっていない。」「子どもが子どもの性的画像をつくるというケースもあり深刻な問題だ」といった指摘がされました。

最後に、テクノロジー企業の役割についても議論がなされました。3人のパネリストから、テクノロジー企業は自身の技術やサービスに責任をもつべきである、大手だけでなく技術力のある中小企業も子どもを保護するための対策を講じることが可能である、ソフトウェア自体に子どもの性的画像を生成できないようにする仕組みを取り入れることが考えられる、企業の行動を促すためにも法規制が重要であるといったことが指摘されました。

今回のシンポジウムは、会場、オンラインを合わせて100名以上の方に参加していただき、新聞などのメディアにも取り上げていただきました。子どもたちをオンラインの危険から保護するために、私たちは「何ができるのか?」。この機会を通して、より多くの人や社会に対してメッセージを届けることができました。

チャイルド・ファンド・ジャパンでは、子どもたちを暴力・搾取から守る取り組みをはじめ、貧困下の子どもたちの支援、紛争・災害時の子ども支援などを行っています。これらの活動は皆さまのご支援に支えられています。ぜひご協力をよろしくお願いします。

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