チャイルド・ファンド・アライアンスが、報告書「女性と子どもの権利に関するワールド・インデックス」を公表しました
チャイルド・ファンド・ジャパン(東京都杉並区、事務局長武田勝彦)が所属する国際ネットワーク、チャイルド・ファンド・アライアンスは、「女性と子どもの権利に関するワールド・インデックス」を公表しました。157カ国を対象とした本報告書では、世界で3人に1人の子どもと、4人に1人以上の女性が、十分に権利が守られていない国で暮らしており、スウェーデン、アイスランド、ノルウェーが権利保護の高い国の上位に入り、最下位はチャドとされています。特にアフガニスタンでは、女性の権利が著しく侵害されていることが報告されています。また、41カ国の子どもたち1万人にインタビューしたところ、失業、貧困、疫病への不安が高いことが明らかとなっています。高所得国の子どもたちは、新興国の子どもたちより、将来への不安を強く感じていることも報告されています。
ワールド・インデックスについて
ワールド・インデックスは、以前はWeWorld Indexとして発行していたもので、157カ国での女性と子どもの権利の現状を分析しています。この報告書は、チャイルド・ファンド・アライアンスのイタリアのメンバー団体であるWeWorldが主導して制作され、基本的な人権の推進、侵害の実態を取り上げています。
2024年11月13日、ニューヨークの国連本部で本報告書が発表され、各国における女性と子どもの権利の状況に基づく世界ランキングが公開されました。今年の報告書は「子どもと若者の未来への権利」に焦点を当て、公平で持続可能な成長と幸福の機会の重要性を強調しています。また、この報告書では、41カ国から1万人の子どもたちの意見を聞き、彼らの不安、希望、夢について取り上げています。
チャイルド・ファンド・アライアンスの事務局長であるMeg Gardinierは、「私たちの目標は、チャイルド・ファンドのプロジェクトに関与する子どもや若者が基本的な権利をどの程度享受しているかを評価し、彼らの日常生活に直接影響を与える問題について対話することである」と述べています。また、「私たちは80年以上の歴史を活かし、子どもの声が聞かれ、尊重されるインクルーシブな世界を目指し続ける」と語った。
ワールド・インデックスの主な調査結果
2023年の時点で、子どもの3人に1人、女性の4人に1人以上が、最小限の人権保護しか受けられない国で暮らしています。このままのペースでは、報告書で評価された権利が完全に実施されるまでに113年かかると予測されています。
情報へのアクセスや水、衛生サービスの改善は見られますが、現代の女性と子どもが暮らす状況は、民主的で安全とは言い難いで状況が続いています。子どもの健康状態は向上しているものの、教育の権利については2020年以降、新型コロナウィルスの影響によって進展が見られていません。
また、女性の教育水準や意思決定への参加は向上しているものの、人権侵害のリスクは依然として高く、弱い立場に置かれています。
世界ランキングの概要
北欧諸国は女性、子ども、女の子の権利保護においてリーダー的な立場を占めています。スウェーデン、アイスランド、ノルウェーが上位をとり、続いてスイス、オーストラリア、デンマークが位置しています。
一方、アフリカのマリ、ニジェール、中央アフリカ共和国は下位に並び、チャドは157カ国中で最下位となっています。
アフガニスタンは、女性や女の子の権利が危機的な状況にある国として指摘されています。また、レバノンやパレスチナも、紛争の影響で状況が悪化する可能性があると懸念されています。
子どもと若者の声:未来への展望
チャイルド・ファンド・アライアンスは、貧困、紛争、気候変動、暴力、将来の夢などの問題に関して、権利保持者である子どもたちの意見を取り入れるため、41カ国の10歳から18歳の子ども1万人を対象とし、調査を行いました。
主な調査結果:子どもの現状
- 障がいのある子どもの7人に1人以上が定期的に学校に通っていません。
- 西アフリカや中央アフリカでは、3人に1人近くの子どもが定期的に学校に通っていません。
- 約10人に1人の子どもが、現在児童労働に従事しています。
- 障がいのある子どもの約4人に1人(23%)が食料の安定を欠いています。これは、障がいのない子どもの場合の14%を上回っています。
- 10人に1人以上の子どもは、ふだん幸福感が低いと感じ、西アフリカや中央アフリカの場合では、3人に1人以上にのぼります。
学校の出席状況や食料の安定は幸福度に関係し、定期的に学校に通い、十分な食事を得られている子どもは、幸福度が高い傾向があります。
子どもの権利に対する認識
- 5人に1人以上の子どもが、自分の権利についての認識が弱く、男子は女子に比べその傾向が強くなっています。
- 社会経済的に弱い立場の子どもは、自らが権利の保持者であるという自覚が低い傾向にあります。
- 10人に4人以上の子どもが、戦争や犯罪の脅威により安全を感じられないと答えています。
- 4人に1人以上の子どもは、大人が子どもたちの権利を完全には擁護していないと感じています。
欧米諸国の子どもたちは、比較的安定した環境に暮らしているにもかかわらず、将来への不安や幸福度の低さ、権利の認識不足を報告しており、自分たちを親の「付属物」と感じる傾向があります。一方で、タンザニアやケニア、ラテンアメリカの一部の国々では、意見を表明する機会は少ないものの、自分たちの権利についての認識がより高いことが示されています。
全体として、男の子も女の子も夢や希望を抱いているにもかかわらず、その声が十分に反映されているとはいいがたい状況にあります。彼らの声に積極的に耳を傾けることでしか、彼らの権利と未来を守る世界をつくることはできません。
子どもたちの未来に対する不安と願い
本報告書の3つ目のパートでは、将来への不安として、失業、貧困、疫病への懸念が挙げられています。大人が権利の促進に積極的であると感じている子どもたちは、これらの脅威に対する不安が少ない傾向が見らえます。
- 7人に1人の子どもは、結婚や子どもを持つかどうかを自由に決められないのではないかと心配しています。
5つの優先的な行動
子どもたちは、より良い未来を保障されるために、大人に対し次の5つの行動を求めています。
- 質の高い教育を受ける権利
- 暴力や差別から保護される権利
- 子どもの意見に耳を傾けること
- 子どもを理解し、尊重すること
- 指導、励まし、サポートをしてくれる存在をもつこと
これらの優先事項は、子どもたちの要望に応え、安全で充実した未来を手に入れる権利を保障するための具体的な行動と政策の重要性を強調しています。
≫ 報告書本体(英語版)、および要約版(日本語版を含む)はこちらからご覧いただけます。