ネパール大地震 緊急・復興支援の活動のご報告(2016/2/5更新)
4月25日、ネパールで巨大な地震が発生し、広い地域にわたって甚大な被害をもたらしました。チャイルド・ファンド・ジャパンは翌日26日には緊急支援の実施を決定し、支援を行ってきました。これまでに行ってきた支援活動についてご報告いたします。報告書がこちらからダウンロードできます。
1. 被害概要
2. 緊急支援物資の配布
3. 防水シート、グラウンドシートの配布
4. チャイルド・センタード・スペース(CCS)での活動
5. 仮設教室(TLS)の建設
6. 学用品セット、教材セットの配布
7. 子どもの安全を守るための研修
8. 中間評価
1. 被害概要
2015年4月25日の地震によって、これまでに死者8,800名以上、倒壊家屋60万棟以上の大きな被害が報告されています。また、復興途上の被災地に追い打ちをかけるように、6月からはモンスーン(雨季)に入り、支援活動にも遅れが出ています。
チャイルド・ファンド・ジャパンの活動地域でも大きな被害がありました。スポンサーシップ・プログラムを実施しているラメチャップ郡で、家屋の倒壊などの被害がありましたが、支援を受けるチャイルドと家族全員の無事を確認することができました。支援プロジェクトを実施するシンドゥパルチョーク郡では、家屋などが壊滅的な被害を受けました。約90%の家屋が全壊・半壊の被害を受け、多くの人々が屋外での生活を強いられています。
5月12日、2度目の大きな地震が起きました。この地震によって支援地域で人的な被害はありませんでしたが、1回目の地震で半壊し、2回目の地震で全壊してしまった家屋も多くありました。
2. 緊急支援物資の配布
チャイルド・ファンド・ジャパンは、5月1日より第一弾となる緊急支援物資の配布を行い、シンドゥパルチョーク郡(4つの村)で3,179世帯にお米、豆、塩を配布しました。パンゲタール村で行った食料配布は、被災した人々にとっては震災後初めての支援となり、人々は数日ぶりに食料を手にして、子どもに食事を与えることができると、涙を流して喜ぶ人もいました。
5月22日からは、第二弾となる緊急支援物資の配布を行い、3,103世帯に対してお米、豆、塩、油を配布しました。第一回、第二回の配布物と量は、以下のとおりです。
支援物資と量 | 第一回配布 | 第二回配布 |
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米 | 12kg | 30kg |
ダル(豆) | 1.5kg | 4kg |
塩 | 1kg | 1kg |
料理油 | – | 1リットル |
支援対象 | 大地震を経験したシンドゥパルチョーク郡の4つの村の子どもと住民 (ドゥスクン村、トウタリ村、ぺトゥク村、パンゲタール村) 第一回配布:3,179世帯 第二回配布:3,103世帯 |
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実施期間 | 第一回配布:2015年5月1日~5月5日 第二回配布:2015年5月22日~6月13日 |
3. 防水シート、グラウンドシートの配布
- 受け取ったシートを運ぶ子ども Photo : Philip Maher
シンドゥパルチョーク郡の4つの村において、最も必要性が高い家庭に、シェルターの資材(防水シート・グラウンドシート)の配布を行いました。防水シートの配布は、資金を一部負担できる持つ村と協力して行いました。
※防水シートのサイズ(1枚当たり12×18m)、グラウンドシートのサイズ(1枚当たり10m)
支援対象 | 大地震を経験したシンドゥパルチョーク郡の4つの村の子どもと住民 (ドゥスクン村、トウタリ村、ぺトゥク村、パンゲタール村) 防水シート:2,688世帯 グラウンドシート:3,000世帯 |
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実施期間 | 2015年5月23日~6月19日 |
4. チャイルド・センタード・スペース(CCS)での活動
5月末から、チャイルド・センタード・スペース(CCS)の活動を開始しました。シンドゥパルチョーク郡とラメチャップ郡で、合計21ヵ所のCCSを設置しています。
チャイルド・センタード・スペースは、被災地の子どものためにテントなどの形態で設置され、子どもたちの学びと遊びの権利を守り、こころと体の健康を支える場です。精神的なショックを受け、こころに傷を負った子どもたちへのケアにつながる遊びや活動が行われます。具体的なプログラムは、歌を歌ったり、読み聞かせをしたり、絵を描いたり、ゲームをしたり、スポーツなどです。
また地震後、家族と一緒に過ごしていた子どもたちに「家族から離れても大丈夫」という気持ちを持たせ、今後学校に通うためのこころの準備をする場所でもあります。私たちは、チャイルド・センタード・スペースの設置・運営を緊急支援の大切な活動と位置づけています。
活動前には、チャイルド・ファンド・フィリピンからチャイルド・センタード・スペースの専門家がネパールに派遣され、スタッフとボランティアに研修を行ったのち、活動が開始されました。CCSの活動は6月末までに終了し、仮設教室に移行しています。
支援対象 | シンドゥパルチョーク郡(4つの村)、ラメチャップ郡(2つの村)の支援対象校の子ども CCSの活動に参加した子ども:1,805人(男の子884人、女の子921人) CCSのファシリテーターとなった教師・地域ボランティア:85人 |
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実施期間 | 2015年5月~6月末 |
5. 仮設教室(TLS)の建設
【仮設教室】
今回の地震によりネパール全土で25,000以上の教室が崩壊し、10,000の教室が修復が必要な状態となりました。校舎が再建されるまでの間、子どもたちの学習の場を確保するため、チャイルド・ファンド・ジャパンは6月初旬より仮設の学習スペース(テンポラリー・ラーニング・スペース:TLS)の活動を開始しました。
TLSは、倒壊してしまったり、壁にヒビが入ったりして倒壊の恐れがあるため使用できなくなってしまった校舎の代わりとなる、簡易的な教室です。
シンドゥパルチョーク郡、ラメチャップ郡合わせて5,800人の子どもたちが学校に戻れるよう、8月末までに6ヵ村の32の学校に60棟のTLSの建設を支援しました。洪水で流された3棟のTLSについても、10月までに設置が完了しています。仕上げには、内装や外壁の塗装、そして子どもの安全面に留意した作業を行いました。
【学校の水飲み場とトイレ】
学校敷地内では、水飲み場やトイレの設置・修繕も進められ、シンドゥパルチョーク郡の支援学校4校にてトイレ5個(男女別の個室計10部屋)の建設と、11校の飲料設備の修繕を行いました。
支援対象 | シンドゥパルチョーク郡(4つの村)の支援対象校 |
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実施期間 | 仮設教室:2015年6月~10月 水飲み場:2015年8月~1月 トイレ:2015年8月~10月 |
【教室備品(家具)】
9月、シンドゥパルチョーク郡の学校で、就学前の幼児から5年生までの40教室を対象に、低いテーブル、座布団、カーペットを、教師にはキャビネットを提供しました。中学校へは顕微鏡を配布しています。同様に、ラメチャップ郡の残りの学校への教室備品の配布が12月までに完了しました。
【仮設教室の冬対策】
設置したTLSは、2年~3年の耐久性を想定した作りですが、冬の厳しい寒さから生徒を守るため、校舎の再建と修復が急務となっています。そのため、チャイルド・ファンドは、教育省発表の教室建設の新しい設計とガイドラインに基いて校舎の再建・修復を行う予定です。校舎再建までの間、チャイルド・ファンドは、必要とされる仮設教室を対象に冬対策を実施しました。TLSの冬対策は、壁に竹資材が使用された仮設教室は全て対象となることが決定され、風と寒さから子ども達を守るために、合板又はトタン資材で壁を覆う対策が取られます。床部分には、木材の台を敷いた上にカーペットを敷き、保温対策がとられています。天井部分には、夜間気温が下がることで天井にできた水滴が落ちてくることを防ぐため、ビニールシートのカバーが取り付けられました。
屋根の下をビニールシートでカバー
床に木材の台とカーペットを敷く
支援対象 | シンドゥパルチョーク郡(4つの村)、ラメチャップ郡(2つの村)の支援対象校 |
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実施期間 | 教室備品の配布:2015年9月~12月 仮設教室の冬対策:2015年11月~ 2016年1月 |
6. 学用品セット、教材セットの配布
1) 学用品セット
7月からの約3週間の夏休みの後、8月前半から2学期が始まり、授業が再開されました。夏休み明けに子どもたちが学校に戻る時期に合わせて、チャイルド・ファンド・ジャパンでは、「バック・トゥ・スクール(学校に戻ろう)キャンペーン」を開始、その一つとして学用品セットの配布をシンドゥパルチョーク郡、ラメチャップ郡の45校の生徒5,133人を対象に行いました。各セットには、通学バッグ1つ、ノート10冊(平均)、ペン14本(平均)、消しゴム6個、鉛筆削り6個、制服の材料が含まれています。
配布された新しい制服を着た子どもたち
配布された通学バックを背負う生徒
さらに、2回目の学用品配布を行い、ノート(生徒一人当たり平均10冊)を5,073人の生徒に配布しました。
2) セーター
寒さが厳しくなる冬に向けて、9月末から1月にかけてシンドゥパルチョーク郡とラメチャップ郡の支援校の生徒へセーターの配布を行いました。
3) 思春期の少女のための衛生キット
衛生キットの中身は、布製生理用ナプキン5パック、歯ブラシ3本、歯磨き粉2本、石鹸6個、消毒液1本、洗濯用石鹸2個、シャンプー1本、懐中電灯1個、爪きり1個、下着5枚、バスタオル1枚、櫛3個、これらのすべてを入れるためのバック1個です。
パートナーNGOのスタッフより、衛生キットを受取った女子生徒たちへのオリエンテーションが行われ、衛生キットの中身と使い方についての説明がされました。
4) 教師用教材セット
また、教師の意欲を高めるため、教師に対する教材セットの配布も行われました。教材セットは、より良い授業を行えるよう手助けするためのものです。教材セットの中身は、カバン、スケジュール帳、グラフ用紙、方眼紙、穴あけパンチ、ホチキスと針、スティックのり、マスキングテープが含まれています。
5) UNICEFキット
UNICEFより各種教育用品の無償提供を受け、チャイルド・ファンドの支援対象である45校に配布しました。教師に対して、教育用セットの使用方法を説明し、子どもたちが継続して通学し学べるように支援しています。
8月31日、ネパールで行われたUNICEFでのミーティングで、チャイルド・ファンド・ジャパンは、各種教育セットの使用状況について、最終報告を行いました。
支援対象 | シンドゥパルチョーク郡(4つの村)、ラメチャップ郡(2つの村)の支援対象校の子ども、教師 1) 生徒向け学用品セット第一回目:5,133人の子ども 生徒向け学用品セット第二回目(ノート配布):5,073人の子ども 2) セーター配布:5,095人の子ども 3) 思春期の少女向けの衛生キット:844人の女子生徒 4) 教師向け教材セット:45校、318人の教師 5) UNICEFキット:45校 |
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実施期間 | 1) 生徒向け学用品セットの配布(第一回、第二回):2015年8月~2016年1月 2) セーター配布:2015年10月~2016年1月 3) 思春期の少女向けの衛生キット:2015年10月~12月 4) 教師向け教材セットの配布:2015年8月~10月 5) UNICEFキットの配布:2015年5月~9月 |
7. 子どもの安全を守るための研修
1) 災害リスク削減(DRR)、緊急時の教育(EiE)、社会心理的サポートについての研修:教師対象
7月24日から3日間、外部から講師を招き、協力団体のスタッフを対象としたトレーナー養成研修を行いました。目的は、学校での災害リスク削減と子どものケアについて、教員に研修を行うことができるトレーナーを養成することです。
子ども向けのゲームを習う教師の様子
2) 子どもの保護についての研修:地域行政・教師対象
対象者: 村落児童保護委員会(VCPC)のメンバー、ワード市民フォーラム(WCF)*、教師
目 的: 緊急・災害時の子どもの保護についての理解を深める
内 容:
・地域の子どもの保護に関わる課題を共有し、対応するための知識とスキルを身につける
・地域・郡・中央レベルに存在する、子どもの保護のためのモニタリング・報告体制について理解を深める
・参加者の子どもの保護に関する役割と責任についての理解を強化する
・参加者による子どもの保護に関するアクションプランの作成
日付 | 参加者(地域・人数) ※対象者内訳は上記の通り。 |
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2015年9月10日、11日 | シンドゥパルチョーク郡2ヶ村より、計38人の参加者 |
2015年11月19日~21日 | シンドゥパルチョーク郡2ヶ村より、計39人の参加者 |
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2015年11月~12月の期間に2回(3日間)の研修 | シンドゥパルチョーク郡2ヶ村より38人の参加者。ラメチャップ郡より18人の参加者。 |
*ワードは、最小の行政区。WCFはワードの住民代表機関
3) コミュニティベース災害リスク削減(CBDRR)研修: 地域対象
対象者:ワード市民フォーラム(WCF)のメンバー、村落災害リスク管理委員会(VDRMC)のメンバーと地域のリーダー
目 的:災害リスク削減・管理についての基礎的概念と、子どもや家族、地域に与える影響について参加者の理解を強化すること
内 容:
・HVC mapping(危険要因・脆弱性・対応能力についての地図の作成)
・参加者の活動するward(区)における災害リスク削減のためのアクションプランの作成
日付 | 参加者(地域・人数) ※対象者内訳は上記の通り。 |
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2015年11月20日~23日 | ラメチャップ郡1ヶ村より、計26人の参加者 |
015年12月~1月に、3回の研修 | シンドゥパルチョーク郡3ヶ村、ラメチャップ郡1ヶ村より、計66人の参加者 |
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CBDRR研修の参加者の様子
4) 災害リスク削減(DRR)、災害に強いコミュニティづくり(CRM)についての研修::スタッフ能力強化
8月9日から12日にかけて、RedR Indiaによる4日間のスタッフ研修が行われ、ネパール事務所のプログラムスタッフと協力団体スタッフの計5人が参加しました。研修の主な目的は、災害リスク管理についての理解を深め、緊急時における災害リスク軽減プログラムの運営方法を学ぶことです。人道支援の本質について、緊急時におけるプログラム管理について、講習を受けました。
また、8月10日から14日にかけては、災害に強いコミュニティ作りの研修が行われ、6人のスタッフが参加しました。ストレスとトラウマについての理解を深め、ストレスを軽減するスキルを学ぶことが目的です。学んだ知識は、トラウマを抱える子どもや人々のこころをケアする際に活かされます。
日付 | 参加者(地域・人数) ※対象者内訳は上記の通り。 |
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2015年8月9日~12日 | ネパール事務所のプログラムスタッフと協力団体スタッフの計5人 |
2015年8月10日~14日 | ネパール事務所スタッフと協力団体スタッフの計6人 |
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支援対象 | シンドゥパルチョーク郡、ラメチャップ郡の支援対象校45校の教師、地方行政の代表者、地域のリーダー、ネパール事務所・パートナー団体スタッフなど |
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実施期間 | 2015年7月~現在 |