ラメチャップ郡における スポンサーシップ・プログラムの活動成果報告
笑顔あふれるラメチャップ郡の子どもたち
2018年3月末をもって、ネパール ラメチャップ郡におけるスポンサーシップ・プログラムの事業を終了いたします。皆さまからの温かいご支援に心より感謝申しあげますとともに、これまでの支援活動の成果をご報告いたします。
1.事業概要
2010年4月、チャイルド・ファンド・ジャパンは、女性と子どもの権利の推進のために活動していた現地のNGOであるRBPW(ラメチャップ・ビジネス&プロフェッショナル・ウィメン)と協働して、ラメチャップ郡においてスポンサーシップ・プログラムを開始しました。「子どもたちが学校に通える環境を整え、中等教育を修了する」ことを目標として掲げ、これまでの8年間で、のべ392名のチャイルドが支援を受けました。
ラメチャップ郡は首都カトマンズの東75 kmの山間部に位置する貧しい地域です。住民のほとんどが農業に従事しており、支援開始当初は16歳以上の約半数が読み書きができない状況でした。学費と教科書は中学校までは無償ですが、文房具などは自己負担となり、これらが購入できないため学校に通えなくなる子どもたちも少なくありませんでした。こうした状況を改善するため、子どもたちが学校に通える環境を整えるための支援を行うとともに、チャイルドの家族や地域の人々を対象とした支援も行いました。
山道を家畜の餌となる草を運ぶ子ども
2. 子どもへの支援の成果
子どもの成長を包括的に支えるため、教育、保健・衛生、自己啓発などの分野における支援を行いました。教育面では学用品の配布や読み書きの苦手なチャイルドに対する補習授業の実施、SLC(中等教育修了認定試験)受験のための特別授業の実施など、子どもたちが学校に通い勉強を続けるために必要となる支援を行いました。保健・衛生面では、日常的に衛生的な生活環境を保つための指導や外傷や病気の際の医療支援など、必要に応じた支援が行われました。自己啓発活動では、手紙の書き方、リーダーシップ、ライフスキル、人間関係の構築など、様々なワークショップや研修を実施して、子どもたちが自信を育み、将来に向けて前向きな姿勢を持つことができるように促しました。
その結果、チャイルドたちの学校の出席率が67%(2010年)から93%(2017年)に、進級率が45%(2011年)から98%へと増加しました。また、8年間で175名のチャイルドが10年生でSLCを受験し、そのうちの80%に当たる140名が見事合格しました。これは合格が非常に難しいとされるSLCのネパールの全国平均(76%)を上回る結果となりました。また、チャイルドが自分たちの役割に気付いて自信を持つようになったこと、教育の大切さを理解するようになったことも成果の一つです。
支援を開始した2010年当初の授業風景。机も狭く、教室の広さも十分ではありません
3. 家族への支援の成果
家族への支援としては、親が子どもの教育に対する関心と責任感を高めることを目的とした取り組みを行いました。子どもにとって教育がどれほど大切なものであるかを理解してもらえるよう、家族を対象とした集会や研修を定期的に実施しました。その結果多くの家庭において保護者の教育への意識が高まり、子どもの生活環境を衛生的に整えたり、決まった時間に食事をするなどの変化が見られました。ほとんどの家庭において、きょうだい全員が学校に通うようになり、家庭内に勉強スペースを作るなど勉強しやすい環境を整える家庭が77%まで増えました。それに加え、学校を訪問し、成績や学校での態度について学校側と直接話し合う保護者の割合が24%から75%になったことも、教育に対する保護者の意識が変わったことを表しています。特に必要と認められた世帯には、医療支援(8世帯)、家の建設支援(4世帯)、収入向上のための支援(11世帯)を行いました。
4. 地域への支援の成果
子どもたちが直面する地域の問題について地域の人々が理解を深め、自分たちで解決すべき問題として責任を持って取り組むことができるよう、意識を向上のための活動を行いました。その一つとして、児童労働や早期婚が子どもたちの将来にもたらす悪い影響についての理解を深められるよう、学校関係者や住民組織の人々を対象とする啓発活動を行いました。また、地域の人々が子どもたちの教育の問題に主体的に関われるように、地域の人々が参加した学校運営委員会が学校の教育計画を策定することをサポートしました。また、現地で事業実施を担うパートナー団体のスタッフの能力強化の研修も実施しました。マネージメント、プロジェクト形成、リーダーシップ、災害時における教育、カウンセリングなどのトレーニングやワークショップを実施し、長期的な視点から現地スタッフの育成に取り組みました。
屋外で行われる親たちの集会
5. 支援終了後の見通し
支援終了時に残る8年生から10年生の43名のチャイルドも、数年後にはハイスクールを卒業します。チャイルドの家族は今まで受けた皆さまからのご支援により、教育の大切さを理解するようになり、チャイルドが中期中等教育を修了するまで、学校に通うことを応援し、サポートし続けることを約束しています。43名に対しては、学用品一式(文房具、制服、セーター、辞書、電卓など)を配布し、今後の学業に支障がないように配慮します。その他、経済的支援が必要な18家庭には、家畜を支給し家計の助けとなるよう生活面でのサポートを行います。
2015年4月の大地震の際には、ラメチャップ郡にも大きな被害が出ました。しかし皆さまのご支援によって実施した緊急・復興支援により、現在では新しく再建された丈夫な教室でチャイルドたちは安心して勉強に励んでいます。大地震という困難に直面しながらも、家族や地域の人々が協力し合い、困難に立ち向かう姿は、今までスポンサーシップ・プログラムを実施してきた8年間の大きな成果です。ラメチャップに暮らすチャイルドや家族が、支援終了後も自らの力で助け合いながら暮らしていくことができるよう、現在、自立に向けた最終準備を進めています。6月には、地域の人々と、これまでの成果を分かち合い、新たな門出を祝う式典の開催を予定しています。
ネパールでのスポンサーシップ・プログラムについて、詳しくはこちらから。